遺産相続によって財産を取得した場合、その額が基礎控除額(非課税枠)を超えると相続税が発生します。
相続税の基礎控除額(非課税枠) = 3,000万円 + ( 600万円 × 法定相続人の数 ) |
たとえば、夫が亡くなり、妻と子ども2人が法定相続人の場合、基礎控除額は4,800万円です。
相続した財産が多いほど相続税額が高額になるため、相続税を軽減するための対策が必要になります。
おもな方法には、つぎの3つが挙げられます。
・相続財産そのものを減らす
・相続財産の評価額を下げる
・非課税枠や優遇制度を利用する
参考:生前贈与 相続税対策
生前贈与は相続税対策として有効
このうち、相続財産を減らす方法として有効なものが、生前贈与です。
生きているうちに子や孫などに無償で財産を与えることで、その分だけ相続財産を減らすことができます。
贈与できる財産には、現金や預貯金のほか、有価証券や土地・建物、美術品、宝石、自動車などがあります。
相続と生前贈与の違い
相続 | 贈与 |
・被相続人の死亡によって、相続人が金銭や権利などの財産を受け継ぐこと ・相続税が発生 |
・贈与者が死亡する前に受贈者に財産を与えること ・贈与税が発生 |
生前贈与の贈与税率と相続税対策
生前贈与には、暦年贈与または相続時精算課税贈与のいずれかの方法があります。
相続時精算課税贈与を選択しない限り、通常の贈与は暦年贈与となります。
生前贈与の種類
暦年贈与 | 相続時精算課税贈与 | |
贈与者・受贈者 | 親族間のほか、第三者からの贈与を含む | 60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫への贈与 |
選択 | 不要 |
贈与者ごと、受贈者ごとに選択が必要 一度選択すると、暦年贈与に戻せない |
控除 | 基礎控除:毎年110万円 | 特別控除:2,500万円(限度額に達するまで何度でも控除できる) |
贈与税率 | 10~55%の8段階(累進課税) | 一律20% |
1年間(1月1日から12月31日)に、贈与を受けた金額が110万円を超えると、10%~55%の税率で贈与税がかかります。
ただし、夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものには贈与税はかかりません。
また、贈与であっても、相続開始前3年以内のものについては、相続税の対象となります(支払った贈与税があるときは、相続税から控除されます)。
贈与税の計算方法
贈与税額=(1年間に贈与を受けた金額 - 基礎控除110万円)× 税率 - 控除額 |
贈与税の税率は、「20歳以上の者が直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合」と「それ以外の場合」で異なります。
複数の人から贈与を受けた場合は、金額を合算して贈与税を算出します。
生前贈与の税率
基礎控除後の課税価格 | 20歳以上の者が直系尊属から受けた贈与 | 一般の贈与 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | - | 10% | - |
200万円超300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300万円超400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 | 30% | 65万円 |
600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 | 40% | 125万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 | 45% | 175万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 | 50% | 250万円 |
3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 | 55% | 400万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
生前贈与は、早く始めて、多くの人に贈与をすることで、相続税の軽減を図ることができますが、長年にわたって110万円以下の贈与をおこなうと、まとまった金額の贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。
生前贈与をおこなう際には、税理士や弁護士などの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。